人材育成小説
2017年7月号(7月27日発行)
登場人物
●JAVADAテクノ
藤堂 秀樹 人事部人材育成担当主任 35歳
海野 清 JAVADAテクノ 社長 67歳
海野 誠二 JAVADAテクノ専務兼人事部長 57歳
津田 和彦 人事部人事課長 50歳
吉岡 佳代子 前人事部人材育成担当 40歳
山崎 健太 人事部人事課 24歳
●Z県職業能力開発サービスセンター
倉田 勉 アドバイザー 62歳(元大手企業人事部長)
黒木 祐一 人材育成コンサルタント 67歳(社会保険労務士、中小企業診断士)
大崎 美和 キャリア形成サポーター 57歳(キャリアコンサルタント)



●第一話

「人事部人材育成担当主任を命ずる」。

「今度もいきなりかぁ」藤堂はパソコンの画面を見ながら、脱力感に覆われていた。

突然の業務命令は2回目だ。「さすがに今度は今まで誰もやったことがないし、想像がつかないな」。

藤堂は入社13年目の35歳、JAVADAテクノの技術力の高さに魅力を感じ新卒で入社した。営業としてスタートし、様々な経験を積み成績も年々上がっていったが、「自分の可能性を広げること」、「自社製品をもっと知りたい」という想いから、5年目に生産管理部を希望し、異動した。生産管理部では製品を深く理解しながら、ものづくりの何たるかを学んだ。夢は膨らみ、いつかは自分が新製品を企画したいという夢も芽生えてきた。

5年後、生産管理のノウハウも一通り身に付けたところで、昨年、管理部人事課へ異動となった。予想外ではあったが、前向きな藤堂は、これもキャリアを広げるチャンスと考え、一から人事業務に取り組んで来た。そして少しずつ実務の感触をつかんできた2年目にこの業務命令を受けたのである。

本来なら上司である津田に相談すべきなのだが、面倒なことが嫌いな津田は「まずはお前が計画を立てろ。」とまるで人ごとのようで、とりつく島もない。また彼は新しい方針が出る度に、それが兄である社長主導か弟の専務から出ているかを独自の社内ネットワークでかぎつけ、その時々に合わせて、自分が一番得するように動いている。その鋭い嗅覚のみで課長になったと言っても過言ではない。


JAVADAテクノは、社長の海野清が一代で興し、現在、社員数約150名までの企業に成長させた。今では、Z県の中心地から少し離れた場所に本社兼第一工場の他、第二工場まである。社長は団塊の世代に近い67歳で、「仕事は見て覚えろ、能書きなんて必要ない」と考えるタイプで、多少強引なところもあるが、厳しい競争に立ち向かう度胸もあり、それを支える技術屋出身ならではの知識も持ち合わせていた。今も社長のカリスマ性は健在だったが、会社自体は、創業当時から屋台骨を支えてきた社員の高齢化に加え、グローバル化に伴う海外との競争激化や迅速なIT化の対応など、経営課題は山積していた。そんな状況下で、社長の片腕として会社を側面から支えてきた弟の専務・海野誠二は、会社の将来を案じていた。「せっかくここまでになった技術力をなんとしても次世代に継承しなければならない。そしてグローバルな競争の中、営業力も強化する必要がある。いずれにしても人材育成が不可欠だ。」また「研修と言っても、新人研修と新任管理職を対象とした形だけのものばかりで、現状のOJT中心の個人の技量に頼る育成には限界がある。現に優秀な人とそうでない人での教育には大きな差がある。会社をもう一度作り直すつもりで人を教育しなければいけない。」と、専務は思いながら、ある社員に白羽の矢を立てていた。それが藤堂秀樹である。「彼にはチャレンジ精神があるし、少しのことではあきらめない強さがある。これだけ社を左右する大きなプロジェクトなので、簡単にはうまくいかないだろうが失敗を恐れず頑張って欲しい。」と、彼には毎日すれ違うたびに視線を向け、無言のエールを送っていた。


そんな専務の想いを知ることもなく藤堂はパソコン画面と格闘していた。

「人材育成・・・。いったい何から始めたいいのだろう。人を育てるということは、その人の知識や能力を高めることなんだろうな」。藤堂は色々なワードを入力し、検索を行う。「Z県 人材教育」で入力してみるとコンサルティング会社や他社の教育方法などが出てきて、とても今回のニーズに合わないものばかりが出てくる。「やはりコンサルティング会社の費用は高いな。それにまだ自分たちは何をするかも決まっていないし・・・。一体どんなキーワードを入れれば、思うようなものにヒットするんだ?」

そして何となくキーボードに“Z県”“能力開発”と入力してみた。
「Z県職業能力開発サービスセンター」
「なんだ、この団体は。」団体名をクリックすると、そこに映し出された「職業能力開発の相談」というページに進んだ。

“厚生労働省の委託を受け、企業における社員の能力開発プラン作成のお手伝いや、働く人への能力開発に関する情報提供などを行う職業能力開発の専門相談窓口です。経験豊富な専門スタッフ(キャリア開発アドバイザー、人材育成コンサルタント、キャリア形成サポーター)が無料でご相談を行っています。お気軽にご利用ください”

「これだよ、これ!」

自分が何となくイメージしていた人材育成やキャリアサポート、キャリア開発などをアドバイスしてくれそうなものにやっと出会うことができた藤堂は、すぐに内容を確認しだした。

「もしかしたら、ここで自分の悩みが解決されるかもしれない」

藤堂は、今後の展開について希望が持てる気がした。



※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物・地名の名称はすべて架空のものです。
都道府県職業能力開発サービスセンターは人材育成、キャリア形成に関する相談やアドバイスを無料で行う窓口で、47都道府県に専門員を配置しています。