企業の現場から
2016年9月号(9月29日発行)

株式会社前川製作所

21世紀の人づくりに向けて

第2章 50歳時研修「自己発見気づきセミナー(場所的自己発見研修)

第2章では、マエカワ独特の研修である「自己発見気づきセミナー(場所的自己発見研修)」について御紹介します。



第1章で述べたように、マエカワには定年がない(定年で辞める人がいない)ことが特徴ではありますが、定年以降も働くために3つの条件を設けています。その条件とは、(1)健康であること、(2)やりたいことがはっきりしていること、(3)周りがその人を受け入れていることです。ただ単に自分が働き続けたいということだけではなく、周囲にもその思いや人間性を受け入れられていることが大切なのです。そこで、シニア世代に入る前の50歳時に、この「自己発見気づきセミナー」が重要な役割を果たします。


「自己発見気づきセミナー」は、自分が考える自分(=自画像)と周りが考える自分(=他画像)のギャップを客観的に受け止めるとともに、それまでに培った豊富な人生経験、技能・技術と広いネットワークを活かし、これからの自分の20年、30年の計画を立てることを目的としています。50歳くらいになると、自分が思っている自分と他人が見た自分とはいろいろなギャップが生じ、このギャップに気づかずにいると周囲との関係がうまくいかなくなるといった状況がうまれていきます。定年後も組織の中で働き続けるためにこのギャップに気づき、自己理解を深め自己変革していくことが重要であり、性格を変えることはできなくても対応を変えることは可能であると私たちは考えています。


研修では、参加者の周囲にいる上司・同僚・部下の5人が、参加者の仕事力(ワークキャリア)を点数評価します。身近な存在である人たちから360度の評価を得るのです。これら他者の評価と自分の評価のギャップを認識することから研修は始まります。ただ、参加者には誰がその評価をしたのかがわからない形を徹底していて、そのために事務局を別に設けて個人情報保護に留意していることも特徴といえます。研修は4名1チームで進められ、チームに1名ファシリテーターがつき、研修のほとんどがチームでの討議や自分を見つめるという作業になります。それまで見ないようにしていた自分の弱点はもちろん、自分では気づかなかった周囲の評価を目の当たりにするわけですから大きなショックを受けますが、同年代のチームの人と討議をしながら、なぜそういったギャップが生じてしまうのか、気づかずにいた自分とは何なのかを深く考えていくことで、今後の組織における自分を見つめていくことができるようになります。第1章でも述べましたが、マエカワでは主体的に『感じ、考え、気づく』ことが職業人生を通じて大切なことです。この「自己発見気づきセミナー」でも、自分自身について『感じ、考え、気づく』ことが大きなポイントになります。


実際に研修を受けた人の感想をいくつか御紹介します。

・なるべく避けて通りたい自分の弱い面と対峙する良い機会となった。

・今まで自分はこうであると思っていたことが実はそうでなかったことを知り、ショックを受けた反面、反省し修正を考える良い機会となった。

・自分自身を見つめ直すことは難しいことと思っていたが、他者から見た内容があると、見つめ直しやすくなる。


もちろん、参加者すべてが上記のような感想を持つわけではありません。自分のやり方に絶大な自信があって、他者の意見を受け入れられない人もいます。でも、定年を過ぎたら今の立場ではいられないという事実があって、「今の役職や立場がなくなっても、それでも組織の中で働き続けることができるのか?周りの人が相談に来てくれるのか?」この問いに即答できる人は少ないのではないでしょうか。前述しましたが、マエカワで定年後働き続けるための条件の1つは、その人を「周りが受け入れていること」です。定年後も、周囲の人に必要とされ、自分のやりたい仕事をしていくためには大切な研修となるのです。

研修終了後、研修内容・行動計画などを職場のリーダーやメンバーに報告し、職場ミーティングレポートという報告書を提出してもらいます。研修を受けてそこで終わりということではなく、行動計画をメンバーに発表することで本人も周囲のメンバーも意識を新たにし、職場が活性化する効果を期待しているためです。また、職場のリーダーとのコミュニケーションの中で行動目標の達成程度を確認するなど、研修で感じ、考え、気づいたことをその後も忘れないような工夫もしています。

マエカワでは生涯現役で働き続けるために、50歳(ミドルエイジ)という世代を転機としてこの「自己発見気づきセミナー」を設け、生涯現役を実現させるための方法を取り入れ続けてきました。定年後の人を雇い続けることが難しいことの一つに、現役時代の感覚をそのまま持ち続けてしまう方が居続けることへの不安も要因ではないでしょうか。そういった問題を解決するために、マエカワでは50歳という中年期を重要視しています。



最後となります次回は、【第3章 静の時代(50代〜80代)】について御紹介します。