キャリア塾
2017年4月号(4月24日発行)
立正大学 経営学部
准教授 西岡由美 氏

第4回

前回は非正社員雇用の多様化の実態と、多様な非正社員全体を視野に入れた人事管理の必要性について説明しました。今回は、前回ご紹介した「多様な働き方に関する調査」のデータを用いて、多様な非正社員が担当する仕事レベルや人事管理の実態についてみてみましょう。


「多様な働き方に関する調査」は、多様な非正社員グループの仕事管理や人事管理の実態把握を目的に、非正社員を雇用している民間企業を対象に実施したものであり、「契約社員・準社員(以下、契約社員)」「パートタイマー・アルバイト(以下、パート社員)」「嘱託社員」の3つの非社員グループについて比較できる構成になっています。

まず、正社員と同等の仕事をしている非正社員がいる企業の割合を非社員グループ別に示したものが図1です。これをみると、正社員と同等の仕事をしている人がいる企業の割合は、嘱託社員は約8割、契約社員が約7割と多いのに対して、パート社員は3割強と少ない結果になっています。さらに正社員と同等の仕事をしている当該非正社員がいると回答した企業に対して、その割合を尋ねたところ、契約社員が64.2%、パート社員が45.8%、嘱託社員が82.6%であり、嘱託社員はその大部分が企業内で正社員と同等の仕事を担当していることがわかります。


では、正社員と同等の仕事とはどの程度のレベルの仕事なのでしょうか。仕事レベルを測るために、同調査では、正社員の標準的な等級(ランク)を用い、非正社員が担当している仕事を正社員の等級レベルと比較してどのレベルに相当するか尋ねています。その結果を示したのものが、図2の折れ線グラフです。横軸が正社員の標準的な等級レベルを表し、右に行くほど仕事レベルが高いことが想定されます。これをみると、パート社員で最も数値が高いのは、「一般職検廚箸い仕事レベルです。つまりパート社員は、大卒初任の一歩手前の仕事を担当している企業が最も多いということです。契約社員については、大卒初任と同等レベルの仕事を担当する企業が最も多いです。嘱託社員は、高い数値の箇所が2つあります。1つは、係長・主任相当の一歩手前の一般職レベルです。もう1つは課長相当レベルです。さらに部長相当以上のレベルの仕事をしている企業も2割以上あり、企業は嘱託社員にかなり高いレベルの仕事を担当させていることがわかります。


次に、非正社員グループに対する人事制度・施策の導人状況についてみてみましょう。ここでは正杜員に対して適用されていることが多い人事制度・施策を、各非正社員グループにどの程度導入しているかみています。表1の赤い数字は非社員グループのなかで最も高い数値を、青い数字は最も低い数値を示しています。これをみると分かるように、企業は他の非正社員グループに比べて、契約社員により正社員に近い人事制度・施策を適用しています。


これらの結果から、同じ非正社員であっても非正社員グル―プによって担当する仕事のレベルは異なり、また人事制度・施策の導入状況も異なることがわかります。とくに嘱託社員は約8割の企業で正社員と同等の仕事を担当し、担当する仕事のレベルがかなり高いにもかかわらず、人事制度・施策の導入はそれほど進んでいないのが現状です。さらに同調査データを用いた詳細な分析結果より、企業は同じ非正社員であっても、嘱託社員を契約社員やパート社員とは異なる社員グループとして捉えており、その結果、異なるロジックで仕事管理や人事管理が適用されている可能性が示されています。これは、多くの企業が嘱託社員を定年後の自社の正社員の受け皿として設定しているからだと考えられます。定年前と同じように仕事をしてもらいつつ、年金との兼ね合いで給与制度を正社員と変えているのでしょう。

契約社員は、パート社員に比べて担当する仕事の面で活用が進んでおり、人事制度・施策の導入も他の非正社員グループに比べて進んでいることがわかります。ただし、「社員格付け制度」や「退職金・慰労金」の導入率が3割を下回るなど、正社員に比べると人事管理の整備はまだまだ進んでいないのが現状です。

なお、「多様な働き方に関する調査」データを用いたより詳細な分析にご興味がある方は、是非、下記の参考文献をご覧ください。



<参考文献>
・西岡由美(2015)「働き方の多様化と新しい人事管理 : 「多様な働き方に関する調査」結果(速報版)」学習院大学経済経営研究所年報, 第29巻, pp.103-118.
・西岡由美(2016)「多様な非正社員の人事管理−人材ポートフォリオの視点から―」『日本労務学会誌』第17号第2号, pp.19-36.


筆者プロフィール

西岡 由美(立正大学 経営学部 准教授)

学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程(経営学専攻)満期単位取得退学。湘北短期大学総合ビジネス学科助手、専任講師を経て、2010 年より立正大学経営学部専任講師、2012 年より同准教授。 主な著者は、「契約社員の人事管理と基幹労働力化 ― 基盤システムと賃金管理の二つの側面から―」『日本経営学会誌』第36号, pp.86-98, 2015年、「人事方針と人事施策の適合と企業成長」宮川努・淺羽茂・細野薫編『インタンジブルズ・エコノミー: 無形資産投資と日本の生産性向上』東京大学出版会, 2016年。