キャリア塾
2017年3月号(3月23日発行)
立正大学 経営学部
准教授 西岡由美 氏

第3回

前回の正社員に続き、今回は非正社員の多様化について考えていきます。1990年代半ば以降、正社員数が減少する一方で、非正社員数が増加しています。それと同時に非正社員においても複数の雇用区分を設ける企業が増加し、企業で雇用される非正社員はパートタイマー、アルバイト、契約社員、準社員、嘱託社員など多様化しています。


非正社員の定義およびその呼称は企業によってさまざまですが、非正社員は人事管理上、短時間勤務かフルタイム勤務かといった労働時間数で区分されることが多いです。このうち前者を代表するのがパートタイマー、アルバイトで、後者を代表するのが契約社員、準社員です。さらに近年、定年後の高齢社員を労働時間数に関係なく嘱託社員として類型化する企業が増加しています。では、「契約社員・準社員(以下、契約社員)」「パートタイマー・アルバイト(以下、パート社員)」「嘱託社員」の3つの非正社員グループの雇用実態はどうなっているのでしょうか。


非正社員を雇用している民間企業を対象に2014年に実施した「多様な働き方に関する調査」(文部科学省科学研究費基盤研究(A)「ワーク・ライフ・バランスを実現する企業支援システムと雇用システム」課題番号24243049の一環として実施)によると、3つの非正社員グループを全て雇用している企業「全て雇用」が調査対象企業の約半数を占めています(図1を参照)。また2つの非正社員グループを組み合わせて雇用している企業も4割弱あり、特定の非正社員グループのみを雇用している企業(「契約社員のみ」「パート社員のみ」「嘱託社員のみ」の合計)は1割強にとどまります。つまり、非正社員を雇用している企業では、複数の非正社員グループを組み合わせて雇用する傾向が確認できます。


このような非正社員の多様化により、非正社員の人事管理にも変化が生じています。従来の正社員と非正社員という二分割の枠組みだけでは、非正社員の活用や人事管理の在り方を検討することが難しくなってきているのです。


非正社員の基幹労働力化のためには、非正社員の人事管理の整備が重要です。基幹労働力化とは、正社員との対比で非正社員がどの程度高度な仕事に就いているか、つまり非正社員と正社員の分業構造を示す概念です。そのため非正社員が多様化し、正社員と非正社員の分業構造が従来の正社員と非正社員といった単純な組み合わせから、正社員と非正社員グループ1と非正社員グループ2といった多様な組み合わせに変化すると、人事管理はそれに合わせた対応が求められるようになります。


また、その際に大きな問題となるのは均衡処遇の問題です。自分の処遇が企業内で公正に決定されているのか(つまり、均衡処遇が実現されているのか)を判断する場合、通常、労働者は個人属性に基づき比較対象を選択しますが、担当する仕事や役割内容などの状況特性が類似するほど状況特性に基づいて比較対象を選択するようになります。その結果、例えば、より基幹業務を担うパート社員は自らの処遇水準の妥当性を判断する際に、比較対象として同じパート社員よりも正社員を選ぶ可能性が指摘されています。このことを踏まえると、非正社員の多様化にともなう職場の分業構造の複雑化は、非正社員が意識する比較対象にも変化をもたらす可能性があります。その結果、図2に示すように、企業には正社員と非正社員の均衡(between)とともに異なる非正社員グループ間の均衡(within)への対応といった多様な非正社員全体を視野に入れた人事管理の構築が求められることになるのです。







筆者プロフィール

西岡 由美(立正大学 経営学部 准教授)

学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程(経営学専攻)満期単位取得退学。湘北短期大学総合ビジネス学科助手、専任講師を経て、2010 年より立正大学経営学部専任講師、2012 年より同准教授。 主な著者は、「契約社員の人事管理と基幹労働力化 ― 基盤システムと賃金管理の二つの側面から―」『日本経営学会誌』第36号, pp.86-98, 2015年、「人事方針と人事施策の適合と企業成長」宮川努・淺羽茂・細野薫編『インタンジブルズ・エコノミー: 無形資産投資と日本の生産性向上』東京大学出版会, 2016年。