キャリア塾
2017年2月号(2月23日発行)
立正大学 経営学部
准教授 西岡由美 氏

第2回

この連載では、人材マネジメントの視点から多様な社員について考えていきたいと思います。連載第1回の前回は、雇用形態の多様化の実態と、企業内の多様な社員の適切な組合せを検討する枠組みを紹介しました。


連載2回目の今回は、正社員の多様化に着目します。前回のコラムでも少し触れたように、雇用が安定していて処遇が高い反面、働き方の拘束性が高い正社員と、雇用が不安定で処遇が低く、能力開発の機会も少ない非正社員の間を埋める中間的な働き方として「限定正社員」が注目されています。さらに、女性や高年齢労働者の増加、ライフスタイルの変化などによって、働き方に対する社員のニーズは多様化しており、企業には「いつでも(労働時間)」「どこにでも(勤務地)」「なんでも(仕事)」といった従来型のいわゆる正社員(以下、無限定正社員)を前提とした雇用の在り方について再考が求められています。


このように新しい働き方として注目されている限定正社員ですが、いくつかのタイプがあります。そこで限定正社員を導入する際の参考にしてもらうために、以下では限定正社員の活用実態とタイプ別の特徴を紹介します。

私が検討委員として参加していた、みずほ情報総研株式会社の「多元的な働き方に関する取組事例集・雇用管理上の留意点に関する周知啓発等事業(平成26年度(厚生労働省委託事業)」の企業アンケート調査によると、限定正社員を導入している企業は約4割となっています。このうち、労働時間、勤務地、仕事という3つの限定基準の組み合わせにより限定正社員をタイプ分けすると、図1の下段にあるように7つのタイプ(それぞれの有無×3乗=8パターンから全て無制約の組み合わせを1つ引いたもの)が考えられます。調査結果によると、実際に企業で導入されている限定正社員タイプは、「仕事限定」「勤務地限定」「仕事+勤務地限定(仕事限定であり、かつ勤務地限定)」の3つが主流であり、時間限定を含んだタイプの活用は少ないことがわかります。つまり、時間限定(短時間勤務)は、育児・介護休業法で育児のための勤務時間短縮措置として、その導入は義務付けられていますが、それを超えた適用を企業はそれほど進めていないのが現状です。

それでは、主要な3つの限定正社員タイプ(「仕事限定」「勤務地限定」「仕事+勤務地限定」)の特徴をそれぞれ見てみましょう。


<仕事限定>

仕事限定は、高度な業務・専門的な業務を担当する人材の処遇やそういった人材の定着を目的に、1990年以前のかなり早い段階から導入している企業が多いです。仕事限定の担当する仕事の範囲の区分け方法には、大きく職種の範囲(事務職、営業職、研究開発職など)と職種の範囲よりも狭い仕事の範囲(渉外担当事務、金融ディーラー、証券アナリストなど)の2つのパターンが考えられますが、大多数は前者の職種の範囲で限定されています。また、仕事限定は他のタイプに比べて、男性の割合が多く、主な年齢層も40歳代と高い傾向にあります。担当する仕事レベルが無限定正社員よりも高い社員も少なくなく、その結果、仕事限定の処遇は無限定正社員と同等、もしくはそれ以上に優遇される傾向にあります。




<勤務地限定>

勤務地限定は、人材の定着やワーク・ライフ・バランスの実現を目的に2000年以降に導入した企業が多いです。勤務地の限定範囲には、勤務地が限定されており、転居を伴う異動はない場合(店舗限定正社員など)と、勤務先の地域が限定されており、その地域内では転居を伴う異動がある場合(エリア限定正社員など)の2つのパターンが考えられますが、前者を採用している企業が圧倒的に多いです。職種は事務職が多く、また他のタイプに比べて営業職や生産工程・技能職も多い傾向にあります。担当する仕事レベルは無限定正社員と同程度のレベルが主流です。さらに処遇については、無限定正社員との間で勤務地という限定要件に応じた賃金格差を手当等で設ける企業が多いです。同タイプの社員は今後増加する可能性が高いですが、職場における配置や異動の柔軟性を阻害し、配置や異動の管理コストの増大につながる恐れがあるため、その活用には留意が必要です。



<仕事+勤務地限定>

優秀な人材の確保、人材の定着、専門的な業務を担当する人材の処遇を目的に、1990年以前に導入した企業が多いです。同タイプはコース別人事制度の下での一般職社員に相当し、担当する仕事のレベルは無限定正社員や他の限定正社員に比べて相対的に低く、無限定正社員の周辺的業務に従事していることが想定されます。その結果、適用される処遇は無限定正社員とかなり格差がある場合も少なくなく、彼(彼女)らのモチベーションを維持するために無限定正社員への転換制度を導入している企業が多いです。



このように限定正社員にはいくつかタイプが考えられますが、全てのタイプの導入が同じように進んでいるわけではなく、企業の導入目的に応じて「仕事」と「勤務地」といった限定基準を中心にその導入が進んでいるのです。




筆者プロフィール

西岡 由美(立正大学 経営学部 准教授)

学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程(経営学専攻)満期単位取得退学。湘北短期大学総合ビジネス学科助手、専任講師を経て、2010 年より立正大学経営学部専任講師、2012 年より同准教授。 主な著者は、「契約社員の人事管理と基幹労働力化 ― 基盤システムと賃金管理の二つの側面から―」『日本経営学会誌』第36号, pp.86-98, 2015年、「人事方針と人事施策の適合と企業成長」宮川努・淺羽茂・細野薫編『インタンジブルズ・エコノミー: 無形資産投資と日本の生産性向上』東京大学出版会, 2016年。