キャリア塾
2016年11月号(11月24日発行)
中央職業能力開発協会
CSCスーパーバイザー
泉田 洋一 氏

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第5回)

1.「中年」とは

この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から紹介していきます。

☆この連載では、「中年」を45歳〜54歳ぐらいの方とします。

☆中年期は人生の折り返し地点でもあり、職業人生の折り返し地点でもあります。


前々回は、「中年」は仕事人生の中間地点であり、長い残りの仕事人生を充実するためには一度立ち止まり、「キャリアの棚卸し」をすることが大切であることを説明しました。続いて、前回は、「キャリアの棚卸し」の仕方について説明をしました。社員に「キャリアの棚卸し」をしていただくために、人事・人材開発部門が中心になって、「キャリアデザイン研修」を実施することがあります。今回は、この「キャリアデザイン研修」の実施の仕方について、説明します。




2.「中年」向けキャリアデザイン研修でどんな項目を実施するのか?

(1) 「中年」向けキャリアデザイン研修実施の目的の説明
キャリアデザイン研修を実施すると、「肩たたき研修」だと思われてしまうことがよくあります。この研修実施の目的は、「「中年」という仕事人生の半分を迎えた受講者の方々に、残りの仕事人生を充実したものにして頂く」ことであることを、受講者に理解してもらいます。できれば、人事担当役員や人事部長から、受講者に直接伝えてもらうのがよいでしょう。また、受講者の上司にも、書面にて、実施の目的を伝えておき、上司からも受講を勧めてもらうようにすることが大事です。なお、人事・人材開発部門は、「中年」だけでなく、定年を迎える方向けのキャリアデザイン研修もセットにした、キャリアデザイン研修体系を作るのがよいでしょう。
(2) 現在・未来−外部環境認識の説明
「中年」の受講者は、社会人になって20年ぐらいでしょう。その間に、世の中がどう変化してきたのか、そしてこれからどう変化していきそうなのか、それに合わせて会社はどう変わっていこうとしているのか。受講者も変化に対応してもらう必要があることを説明します。しかし、世の中/企業が、これからどうなるのかは、予想がつきにくいものです。技術革新を考えると、企業人生の前半の20年間より、後半の残りの20年間はもっと大きな変化が起こると覚悟してもらう必要があるでしょう。
(3) 現在・未来−自分にこれから起こりそうなことを考えていただく
残りの人生にどのようなイベントが起こるのかを考えて、マネープランを作成します。イベントとしては、マイホームの購入、子供の進学・結婚等があり、このようなときに、どうしてもお金が必要になります。また、忘れてはならないのが、親の介護の問題です。子の立場としては、親の介護は想像したくないことですが、介護離職が多くなっている現在、「中年」の受講者には、キャリアデザイン研修受講の機会に、しっかり考えておいてもらいましょう。また、親が介護状態になったときに、親は、家で子に面倒をみてもらいたいと思っているのか、施設に入りたいのかは、子としては親に聞きづらいものです。しかし、「会社の研修で、宿題として聞いてこいと言われた」というと、聞きやすくなります。
(4) 会社の制度の説明
親の介護や雇用延長に関して、会社の制度を理解してもらいます。制度を知らずに苦しんでいる社員もいます。人事・人材開発部門としては、このような研修の機会を活用し、制度を周知させることも大事です。
(5) キャリアの棚卸しとキャリア計画の立案
マネープランを考えたときに、多くの方は働き続けないと生活が出来ないと思うでしょう。働き続けることは、成果を出し続けることです。成果を出し続けるための強みを、「キャリアの棚卸し」で見つけます。「中年」になるまでに働いてきたことを振り返り、何が自分の強みなのかを理解します。前回説明したように、その強みの中に、陳腐化して使えなくなった強みがあるでしょう。「キャリアの棚卸し」で得た強みを、いつまでに、ブラッシュアップする必要があるのか、何を新しく身につける必要があるのかのキャリア計画を立てます。



3.「中年」キャリアデザイン研修実施上の問題とその対応

(1) 何歳を受講対象者にすればいいのか?
対応:仮に、45歳を受講対象者にしたいと思っても、「まだ、早い」というような意見が多く出るでしょう。ならば、もう少し上の47〜48歳ぐらいから始めましょう。キャリアデザイン研修を受講すると、自分を振り返ることにより、自己効力感が増していきます。すると、「あの研修は、いい研修だ」とか、「あの研修は受講しておいた方がいい」という声があがり、「もっと早く受けたかった」という声が聞こえてきます。そうなった時、少しずつ、受講対象者の年齢を下げていくのがいいでしょう。
(2) 「受講後、会社を辞める人が増えるのではないか?」、「寝た子を起こすな」と言われる。
対応:もし、会社を辞める人が増えると思うのならば、その会社が社員にとって魅力がないのかもしれません。キャリアデザイン研修の問題ではなく、会社の制度等の問題ではないでしょうか? まずは、会社の制度、たとえば、人事制度を見直し、魅力的な会社にする方が先決だと思います。



今回は、「キャリアデザイン研修」の実施の仕方について説明をしました。
次回、最終回は、「中年」のキャリア形成に必要な行動について説明します。


以上




筆者プロフィール

泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定擬鏐膤福産業カウンセラー。