キャリア塾
2016年10月号(10月27日発行)
中央職業能力開発協会
CSCスーパーバイザー
泉田 洋一 氏

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第4回)

1.「中年」とは

この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から紹介していきます。

☆この連載では、「中年」を45歳〜54歳ぐらいの方とします。

☆中年期は人生の折り返し地点でもあり、仕事人生の折り返し地点でもあります。


前回は、「中年」は仕事人生の中間地点であり、長い後半の仕事人生を充実させるためには、一度立ち止まり、「キャリアの棚卸し」をする大切さを説明しました。今回は、「キャリアの棚卸し」の意味とそのやり方、注意点について説明します。




2.「キャリアの棚卸し」とは

一般に、棚卸しとは、商品・製品などの在庫の数を、実際に数えることです。数える際に、品質の確認も行います。棚卸しをすることで、陳腐化した商品・製品や入手した時より価値が下がっているもの、また使えなくなったもの、必要価値がなくなっているものを知ることができます。


「キャリアの棚卸し」では、一般的な棚卸しと似たような考え方をします。「キャリアの棚卸し」は、これまで自分が携わってきた仕事や学習について振り返り、何ができるのか、どんな経験をしてきたのかを、整理する作業です。


皆さん自身が、一つの企業だと考えると、自分という企業が生き残るためには、どんな「売れるもの=強味(知識、スキル、経験 等)」を持っているか、「売れるもの=強味」の現在の商品価値を把握することが必要です。働く人は、「キャリアの棚卸し」を実施し、いつでも、自分の売れるものを用意しておく必要があります。




3.「キャリアの棚卸し」の仕方

商品・製品は、物体として目に見えますが、知識やスキルは目に見えません。さらに、商品・製品などの在庫と違い、台帳がありません。これが、一般の棚卸しより、「キャリアの棚卸し」の難しい点です。

台帳がないのですから、台帳を作ることから、「キャリアの棚卸し」を始めます。台帳を作るために、これまで自分が携わってきた仕事や学習歴について振り返り、何ができるのか、どんな経験をしてきたのかを、書き出します。

実際には、職務経歴書を用いて、記入していくのが良いでしょう。職務経歴書を書くことにより、どんな時に、どんな仕事をしたか、どんなことを身に着けたかが思い出せます。人事部門に聞けば、自分が入社後、どんな部署に在籍していたのかを教えてくれると思います。転職の場合は、過去の職務経歴書や履歴書が役に立つでしょう。異動の年月を正確に把握する必要はありません。重要なのは、どんな仕事をしたのかを思い出せることです。

過去、どんな部署にいたのかがわかった後は、どの部署でどんな仕事をしたか、その仕事のためにどんな知識やスキルを身に着けたかを、書き出します。ここで終わりにしてしまう方が多いのですが、ここからが、重要な作業となります。

一般の棚卸しでは、陳腐化した商品・製品は、破棄するなり、安売りをしたりして、仕入れた時の値段よりも安くなることがあります。「キャリアの棚卸し」でも、知識、スキルが陳腐化していないか、身に着けた時点より必要価値が下がっていないか、今も必要とされているものなのかを評価することが必要になります。世の中の技術革新が急激に進み、過去に身に着けた知識やスキルが不要になってしまうことさえあるのです。陳腐化する迄の時間がどんどん短くなってきていることは否定できないでしょう。ですから、自分の強味を、再評価をすることは必須となります。



自分の強味の現在価値を把握しよう



先ほど、どのような知識、スキルを身に着けたか、どんな経験をしたかを書き出しました。それらに対して、次の3つに分類します。

(1)そのままこれからも使えそうなもの。
(2)ブラッシュアップが必要なもの。
(3)陳腐化して、今は使えないもの。


(1) に対しては、「本当に、このまま使えるのか?」と厳しい目で見てください。
(2) に対しては、いつまでに、どのような状態までブラッシュアップするのか、そのためには何をしたらいいのかを具体的に考えてください。
(3) と認めることはつらいことです。「中年」になるまでの長い時間を掛けて身に着けた知識、スキルが陳腐化しているとか、不要になったと自分で認めることは、難しいことです。しかし、この現実を直視しないと前へとは進めません。企業人事の立場から言えば、「過去に何ができた」ではなく、「今、何ができる(成果を出せる)、成果を出せた」という点で、給与を決めます。ですから、「キャリアの棚卸し」をしながら、「この知識、スキルは、いつまで使えるのか?」と、必ず問いかけてください。この問いは、「中年」の方の後半の仕事人生を生き抜くために、重要なものです。陳腐化した知識やスキルが多いのならば、新しい知識やスキルを身に着けなければなりません。また、過去に身に着けた知識やスキルが今の仕事ではあまり価値はないが、他の仕事で役立つのならば、仕事を変えるという選択肢もあるでしょう。これらは、前回、説明した「40歳定年制」の考え方であるとも言えるでしょう。



今回は、「キャリアの棚卸し」の意味とそのやり方、注意点について説明をしました。社員に「キャリアの棚卸し」をしていただくために、人事・人材開発部門が中心になって、「キャリアデザイン研修」を実施することがあります。次回は、「キャリアデザイン研修」の実施の仕方について説明します。


以上




筆者プロフィール

泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定擬鏐膤福産業カウンセラー。