キャリア塾
2016年9月号(9月29日発行)
中央職業能力開発協会
CSCスーパーバイザー
泉田 洋一 氏

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第3回)

1.「中年」とは

この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から紹介していきます。前回までの要点は、次の通りです。

☆この連載では、「中年」を45歳〜54歳ぐらいの方とします。

☆中年期は人生の折り返し地点でもあり、職業人生の折り返し地点でもあります。ですから、中年の場合の中長期視点として、定年・雇用延長というイベントは外せません。
定年・雇用延長と言う大きな節目を、中年期のうちから、しっかり考えておくことが大事です。


今回は、「40歳定年制」という考え方を説明します。




2.「40歳定年制」とは

「40歳定年制」は、2012年7月に、政府の国家戦略会議「フロンティア分科会」で東京大学大学院教授の柳川範之氏が提言した施策です。


「40歳定年制」という言葉を初めて目にしたとき、「年金支給年齢が65歳に引き上げられるのに、いや、もっと遅くなる可能性もあるのに、『40歳定年制』って、何をおかしなことを言っているんだ?」と感じられた方も、多いのではないでしょうか。


≪40歳定年制≫
必ずしも一生を一つの会社で過ごすのではなく、環境や能力の変化に応じて20〜40歳、40〜60歳、60〜75歳と三つの期間でそれぞれに合った活躍できる働き場所を見つけ、元気なうちは全ての国民が活き活きと働く社会となる。

「40歳定年制」という言葉が刺激的なため、この言葉を聞いた人は、それだけで否定的になってしまうかもしれません。しかし、「40歳は、これからのキャリアを再構築する時期」くらいの感じで捉えれば、納得がし易いかもしれません。75歳まで働く(働かなければならない?)ために、「40歳定年制」を提言しているのです。


筆者が参加している、日本人材マネジメント協会(JSHRM)のリサーチプロジェクトでは、「2段階定年制」を提案しています。


≪2段階定年制≫
企業は、従来の60歳定年(第2定年)に加えて、40歳代で第1定年を設定し、60歳定年の60歳まで十分な時間があるうちに、これまでのキャリアを棚卸し、高齢期のキャリアについて考える機会を提供し、充実した高齢期に向けて準備させる必要がある。つまり、2段階定年制は、自分で生きる力をつけ、自分でキャリアを開発する出発点としての「自己発見型」定年制なのである。

「2段階定年制」は、「フロンティア分科会」の「40 歳定年制」と、似たような考え方ですが、「キャリアの棚卸し」や「キャリアについて考える」という具体策が提案されています。


以前は、定年が55歳でした。その後、定年が60歳なり、現在は65歳迄働き続ける必要がでてきました。働く年数が増えますが、同じ知識・技能で同一の仕事をこなせる期間は短くなってきています。こういう状況を考えると、企業人生の途中で、キャリアをチェンジするという発想は自然だと思います。


「中年」になる45歳は「仕事人生の正午(折り返し地点)」であると言えます。ですから、「中年」になる少し前の40歳代前半に、「キャリアの棚卸し」をし、「中年」以降の働きかたを考えるのはいいタイミングでしょう。「キャリアの棚卸し」をする際には、その方が社会人になった時代と、現在の働き方・仕事の仕方、知識・技術、人事制度等、色々な状況・環境が変わっていると言うことを認識することが大事です。




3.人事部門が行うこと

企業の人事部門は、中年期に入った従業員に対し、「キャリアの棚卸し」をしてもらう機会を設定しましょう。人事考課が悪い人、職位の低い人だけを対象にする企業がたまにありますが、これは避けたほうがよいです。「キャリアの棚卸し」が、罰則のように思われてはその効果が期待できません。一度、悪い評判がたってしまうと、それを取り戻すのは大変時間とパワーのかかることです。人事部門は、そうならないようにしなければなりません。

人事部門には、40歳になった全従業員に「キャリアの棚卸し」を実施するというような制度を設けることを推奨します。時間は、平等に流れるのですから、40歳の従業員の方は、皆、20年後、60歳になるのです。これは、職位が高かろうが低かろうが変わらないのです。

時間とお金はかかりますが、「キャリアの棚卸し」制度を定着させるには、これが一番いい方法だと思います。


「キャリアの棚卸し」制度を実施する際には、「何のために、キャリアの棚卸しを実施するのか」をきちんと説明することが大事です。40歳以降の仕事人生を、より納得いくものにしていただくために、「キャリアの棚卸し」をするのだということを丁寧に説明しましょう。これを実施しないと「キャリアの棚卸し」が「ただやっただけ」になってしまいます。

今回は、「中年」は仕事人生の中間地点であり、長い残りの仕事人生を充実するためには、一度立ち止まり、「キャリアの棚卸し」をする大切さを説明しました。次回は、「キャリアの棚卸し」の仕方について、具体的に説明します。


以上

※JSHRM(Japan Society for Human Resource Management:日本人材マネジメント協会)は、「日本におけるHRMプロフェッショナリズムの確立」を使命に、我が国の人材マネジメントを担う方々のための会員(年会費制)組織として2000年に設立されました。以来、日本を代表する人材マネジメントの専門団体として、人材マネジメントに係る方々のための能力向上と会員ネットワークを活かした情報交換・相互交流、更にグローバルな視点からの各種調査研究・提言・出版などの諸活動を展開しています。



筆者プロフィール

泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定擬鏐膤福産業カウンセラー。