キャリア塾
2015年8月号(8月27日発行)
国立大学法人 東北大学
高度教養教育・学生支援機構
キャリア開発室 高橋 修 准教授

今回は、キャリア・コンサルティングの中核的な活動ともいえる、学生のキャリア形成支援に関する個別相談に焦点を当ててみたいと思います。

学生からの相談内容は、たとえば大学院へ進学するか就職するかで悩んでいる、どのような資格を取得すれば良いかを教えてほしい、留学をする時期はいつ頃が良いのか知りたい等々、多岐にわたります。ここでは就職活動そのものに関する相談に絞ったうえで論を進めましょう。

さまざまな相談内容を就職活動の流れに沿って整理してみると、学生たちの悩みは以下の4つに大別できるように思います。

(1)就職活動の第一歩が踏み出せない
(2)エントリーシート(自社専用の応募用紙)がうまく書けない
(3)面接でうまく話せない
(4)内定がなかなかもらえない

そこで、この流れの順に個別相談の事例を紹介したうえで、最近の学生像について考えてみたいと思います。





1.就職活動の第一歩が踏み出せない

今年でいえば大学3年生・短大1年生の3月1日から、昨年までであれば12月1日から一斉に就職活動が始まります。学生たちは企業説明会に出かけたり、受験を考えている企業にエントリー(応募の意思表示)したり、エントリーシートに記述したりと急に忙しくなります。

しかし、1か月しても2か月経っても、なかなか動き出さない(動き出せない)学生も見受けられます。本人に「どうかしたの?」と尋ねると、「何を、どうしたら良いか分からないんです」というような返事が返ってきます。

「就職活動の進め方に関するガイダンスには出席したかい?」
「はい、出るには出たんですけど……」

こうした学生は、未知なる活動に対する漠然とした不安や、これまでの人生でほとんど経験したことのない「不合格」とされることへの恐れがあるように感じます。特に、高校も大学・短大も推薦入試で入学した学生などに見られがちな傾向です。

そこで、「実践練習のつもりで1〜2社エントリーして、就職活動の流れに乗ってみたら」とか、「最初のうちは、落ちて当たり前だよ」などと、やんわり背中を押すような働きかけをします。




2.エントリーシートがうまく書けない

たとえば趣味・特技、入社後にやりたい仕事など、エントリーシートで学生に記述を求める項目は各社各様です。しかし、自己PRや志望動機は必須項目といえるでしょう。

このエントリーシートの記述に際して、「自己PRに書けるようなことがない」などと漏らす学生が少なからずいます。しかし、人間は誰しも長所や強み、得意なことが必ずあるはずです。このような学生は自己分析の不足、換言すれば、まだ自分と真剣に向き合っていない状態と思われます。そこで学生には、

「部活動やサークル活動は何かしていた? アルバイトの経験は?」
「そうした経験の中で、大変だったことは?」
「それをどのようにして乗り越えた?」
「そこから学んだことは?」

などと少しずつ問いかけながら、学生自身が自分の長所や強みに気づき、それを自己PRの材料としてうまく引き出せるように手助けをします。

また、「うまく志望動機が書けない」といった相談も数多く寄せられます。このような場合は往々にして企業研究が不足しています。つまり、経営理念、事業内容、求める人材像などに対する理解が浅い状態です。会社概要やホームページの情報だけで記述した結果、リアリティさに欠けたり、「何としても入社したい」という熱意が感じられない志望動機も散見されます。

このような学生に対しては、たとえば「受験するのは銀行だよね。だったら、実際にその銀行の支店に行って、良く見てきたらどう? きっと何か感じることがあると思うよ」などと投げかけます。学生たちには、ネットの情報だけに頼らず、現場へ行って現物に触れ現実を知ることの大切さに気づいてほしいと思います。




3.面接でうまく話せない

個別相談では面接練習も行います。そして、次の相談時に「この間の会社の面接試験は、どうだった?」と尋ねると、「緊張して、頭の中が真っ白になってしまった」とか「エントリーシートに書いた内容を覚え切れなかった」などの返事が返ってくることがあります。

そのような学生に対しては、次の面接試験に備えて、「自分の過去に関する質問」(学生時代に注力したことなど)、「現在に関する質問」(志望動機、現在の関心事など)、「未来に関する質問」(入社後にやりたい仕事、10年後の自分など)の3つを想定して回答を整理しておくことや、記述した内容を覚えるのではなく、キーワードと話す順番だけを押さえておくことなどを助言します。

ここで、面接での成功事例を幾つかご紹介しましょう。

アパレルメーカーを受験したある学生は、面接中の質問にうまく答えられずに窮していました。「このままではまずい」と感じた学生は、「御社の洋服はもちろんですが、スタッフの接客が大好きです。ですから、たとえ御社が納豆屋さんでも入社したいのです!」と、渾身の一言を絞り出しました。彼女の場合、これが決め台詞となって内定を獲得することができました。

また、自分の特技で救われた学生もいます。ブライダル企業の面接試験で「何か趣味や特技はありますか」と問われたある学生は、高校野球のマネジャー時代を思い出し、とっさに場内アナウンスの一節を披露しました。

「○○高校、選手の交代をお知らせします。ピッチャーの伊藤君に代わりまして小林君が入ります。9番、ピッチャー、小林君。」

さて、面接官の反応や如何に?

「私は△△高校の野球部出身で、専務の鈴木と言います。鈴木でもう1回やってもらえませんか」と言われ、リクエストに応えてもう一度実演しました。その後、内定を獲得したことは言うまでもありません。




4.内定がなかなかもらえない

上述のように内定を獲得できる学生ばかりとは限りません。なかなか内定がもらえずに、個別相談の場で泣き出してしまう学生もいます。

「僕って、社会から必要とされていないんでしょうか」

「このままどこにも決まらなかったら、どうすれば良いのでしょうか」

そんな場合には、「その会社が求める人材像と、君との相性が合わなかっただけだよ」と、決して学生の存在否定ではないことを諭します。そして、「きっと、君を必要としてくれる会社があるはずだよ」と勇気づけ、「いつでも、また相談にのるからね」と支援を申し出ます。




5.最近の学生像とキャリア・コンサルティング

ここまで、就職活動に関する個別相談での事例を紹介してきました。私が、こうした日々のキャリア・コンサルティングを通して感じる最近の学生像は、以下の3点です。

(1) リスクテイクを避ける安全志向……受かりそうもなかったら(落ちそうだったら)受験しない。
(2) ネット重視志向……ネットによる情報収集は行うが、リアルな情報収集(現場・現物・現実)は軽視しがち。
(3) ストレス耐性の弱さ……数社の受験に失敗しただけでも、めげたり落ち込んだりしやすい。

しかし、「今どきの若者は……」などと、眉間にしわを寄せるつもりは毛頭ありません。なぜなら、「最近は、就職活動に熱が入ってきたようだね」とか、「この間の会社から内定をもらったんだって。良く頑張ったね!」などと、うまく認めたり褒めたりしてあげれば頑張れるという点も、最近の学生の一面の真実だからです。これからも、学生個々の心理状態の理解に努め、その状態に応じたキャリア・コンサルティングを心がけていきたいと思います。



次回は、インターンシップについて事例を交えながらお伝えしたいと思います。題して、「涙と励ましのインターンシップ」です。