キャリア塾
2015年7月号(7月30日発行)
国立大学法人 東北大学
高度教養教育・学生支援機構
キャリア開発室 高橋 修 准教授

今回の創刊号からしばらく、コラム「キャリア塾」を担当する高橋修です。よろしくお願いします。民間企業での店舗マネジャーや学校法人での産業人教育・コンサルティング等を経て、大学教員へと転じて今年で8年目になります。私立大学を皮切りに私立短期大学、国立大学と現在で3校目ですが、その間一貫して職業性ストレスに関する研究とキャリア教育に従事してきました。

このコラムでは、現場で実際に起こっていることを取り上げながら、学校や企業でのキャリア・コンサルティングの必要性について考えてみたいと思います。まずは、大学や短大でのキャリア教育現場の様子を数回にわたってお届けします。


今回のテーマは、大学でのキャリア教育の動向と、現在勤務している大学でのキャリア教育の進め方についてです。




●大学でのキャリア教育の動向と進め方

このメールマガジンの読者の中には、「自分が学生の頃にはキャリア教育なんてなかった。いったい学校でのキャリア教育って、どんなことを教えているのか?」と疑問に思う方もいることでしょう。

キャリア教育の始まりは、実はそれほど古いことではありません。文部科学行政関連の審議会報告として初めてキャリア教育という用語が登場したのは、1999年の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」です。既に当時は、若年者のフリーター志向の広がりやニートの増加、高水準で推移する就職後の早期離職(いわゆる七・五・三問題)等が社会問題となりつつあったことから、答申では「学校から職業への移行」(school-to-work transition)をスムーズに行うべく、小学校段階から発達段階に応じてキャリア教育を実施することの必要性が指摘されました。

現在、キャリア教育は「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」(中央教育審議会答申 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」2011年)と定義されています。ここでいう必要な基盤となる能力や態度とは、

(1)自ら主体的に判断してキャリアを形成していくプランニグ能力
(2)自己管理能力、対人能力、問題解決力といった職種汎用的な能力

の2つが中心となります。これらは、(1)が自律的キャリア、(2)がエンプロイヤビリティやコンピテンシーという、移行(就職)先である産業界の人材ニーズを反映させたものであるといえるでしょう。

そして、2010年に大学設置基準・短期大学設置基準が改正され、教育課程の内外を通じた社会的及び職業的自立に向けた指導、いわゆるキャリアガイダンスが2011年から義務化されました。これを受けて各大学・短大では、単位を付与する正課教育と付与しない正課外教育とを組み合わせながら、キャリア教育の展開・充実を図っています。

キャリア教育の内容は具体的には、

(1)学生全体を対象としたキャリア教育
(2)個別のキャリア相談・支援
(3)自発的学習活動や課外活動等に対する支援 の3つに大別されます(国立大学協会「大学におけるキャリア教育のあり方」2005年)。

(1)では、キャリアデザインやキャリアガイダンス等の科目名を冠し、ライフキャリアや職業そのものを取り扱う「キャリア教育科目」、実習先の企業や団体等で一定期間にわたって就業体験を行う「インターンシップ」などが中心となります。

また、(2)がキャリア・コンサルティングの中核に当たる部分です。

(3)については、(1)や(2)の活動の中で予習・復習の必要性を話したり、部活動・サークル活動やボランティア活動等の意義を伝えたりします。

以上のような動向を踏まえて、現在の勤務校では、

<ステップ1>学生生活・進路を考える
<ステップ2>自分を知る(自己理解)
<ステップ3>社会・仕事を知る(職業理解)
<ステップ4>就職活動に備える

の4つのステップを設定して、1年生から卒業学年(学部4年生、修士2年生、博士3年生)までの学生をトータルに支援しています。

<ステップ1>は、大学生活の過ごし方、ライフキャリア、職業キャリア等について学び、自分のライフプランについて考えること。そして、それをこれからの大学生活に生かすことを目的とした低学年向けの正課教育です。

<ステップ2及び3>では、自己理解と職業理解を踏まえて、「なりたい自分」を思い描き「やりたい仕事」を探索したうえで、「やるべきこと」を明確化します(図表1参照)。

自己理解では、自分で内省する、心理検査を活用する、周囲に聞いてみるという3つの方法を取り入れています。また、働いた実感のない学生の職業理解を深めるのは一苦労ですが、卒業生をゲスト講師に迎えたり、低学年からのインターンシップを勧めたりと試行錯誤しています。



<ステップ4>では、ビジネスマナー、履歴書・エントリーシートの書き方、グループディスカッションの進め方、面接の受け方等について、正課外教育のセミナーとして実施しています。

以上のような活動を、キャリア教育担当教員3名とキャリア支援部署の職員7名が協働しながら展開しています。キャリア教育に従事する教職員は、民間企業出身者であったり、キャリア・コンサルティング技能士や標準レベルのキャリア・コンサルタントの有資格者が多いです。


次回は、個別のキャリア相談・支援(キャリア・コンサルティング)に焦点を当てて、相談から見えてくる最近の学生事情をお伝えしたいと思います。